運転免許を拒否される病気は条文で決まっている
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「持病があると免許は取れない」という話を聞いて、申し込む前に足が止まる人がいます。条文を見ると、対象になる病気の範囲も、除外される条件も、かなり細かく決まっています。この記事は診断をするものではありません。条文がどう区分しているかだけを確認します。
原則は「与えなければならない」(道路交通法90条1項)
原則は、試験に合格した人には免許を出すことです。90条1項の本文は「与えなければならない」という言い方をしていて、拒否・保留は、そのあとに続くただし書きの中の例外です。
90条1項を開く
ただし、次の各号のいずれかに該当する者については、政令で定める基準に従い、免許(仮免許を除く。以下この項から第十二項までにおいて同じ。)を与えず、又は六月を超えない範囲内において免許を保留することができる。
括弧の中に注意が要ります。「仮免許を除く」とあるので、この項が扱っているのは本免許(と第二種免許)で、仮免許はこの項の対象に含まれません。
もう1つ、条文の末尾も読んでおく必要があります。「与えず」と「保留する」の2つが並んでいて、どちらになるかは一律ではありません。保留には「六月を超えない範囲内」という期間の上限が付いています。無期限の話ではなく、一定期間のうちに状態を見て判断し直す仕組みだと分かります。実際にどちらになるかは、次に見る病気の区分と、個別の状態によって変わります。
対象になる病気は3つに分けて定義されている(1号)
拒否・保留の対象になりうる1つ目が「病気にかかつている者」(1号)で、条文は病気をイ・ロ・ハの3つに分けています。イとロは次のとおりです。
幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの
発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの
ハは「イ又はロに掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気」です。気分障害や重度の睡眠障害などが含まれます。3つとも「政令で定めるもの」に絞られていて、病気の種類を無条件に広く拒否しているわけではありません。
政令の側には除外規定が入っている(施行令33条の2の3)
ここがいちばん見落とされやすい部分です。イの「政令で定める精神病」の中身を見ます。
法第九十条第一項第一号イの政令で定める精神病は、統合失調症(自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈しないものを除く。)とする。
統合失調症という病名だけで区切っているのではありません。運転に必要な能力を欠くおそれがある症状を呈しないものは、この定義から除かれています。
てんかんも同じ形です。ロの「政令で定める病気」の1号に挙がっています。
てんかん(発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの並びに発作が睡眠中に限り再発するものを除く。)
発作が再発するおそれがないもの、発作が起きても意識・運動障害が出ないもの、睡眠中に限り再発するものの3つは除かれます。 この定義そのものから外れる形です。診断名が同じでも、症状の現れ方によって条文の扱いが分かれる形になっています。
認知症と依存症も対象に入っている
病気とは別に、1の2号と2号にも挙がっています。
介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第五条の二第一項に規定する認知症(第百二条第一項及び第百三条第一項第一号の二において単に「認知症」という。)である者
アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
認知症は介護保険法の定義をそのまま引いています。依存症のほうは物質を4種挙げる形で、「中毒者」という状態に対する規定です。単に使用したことがあるかどうかではなく、中毒という状態に至っているかどうかが条文の線引きです。
これら2つには、1号の病気のような政令での細かい除外規定は条文上見当たりません。ただし90条1項全体の枠組みは同じです。対象になりうる状態であっても、「与えず」か「六月を超えない保留」かは個別に判断されることに変わりはありません。
誰がどう判断するか(89条2項)
判断するのは公安委員会(免許を出している都道府県の機関)で、読者本人でも、この記事でもありません。入口は、免許の申請時に公安委員会が交付できる質問票です。89条2項の原文です。
89条2項を開く
前項に規定する公安委員会は、同項の規定により免許申請書を提出しようとする者に対し、その者が次条第一項第一号から第二号までのいずれかに該当するかどうかの判断に必要な質問をするため、内閣府令で定める様式の質問票を交付することができる。
質問票への回答をきっかけに、必要な場合は診断書の提出や検査が求められる流れになります。該当を疑う理由があるとき、公安委員会は臨時の適性検査や医師の診断書の提出を命じることができます(道路交通法102条4項)。そのときは質問票の記載内容を考慮します。質問票にうその記載をして出すと、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(117条の4第1項3号)。持病の治療歴がある人は、申込みの前に運転免許試験場の窓口に相談してください。治療を受けている医師に相談しておくのも一つの方法です。当日になって分からずに困ることが減ります。
条文の作りを見返すと、「病名がある=拒否される」という単純な対応関係ではありません。 1号の病気は症状の現れ方まで政令で区切られていて、除外規定に当てはまれば対象から外れます。逆に、条文に病名が挙がっていなくても対象になることもあります。90条1項ハの「その他、安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気」に当てはまる場合です。どちらの向きにも、思い込みで判断しないことが要点です。
合宿免許での位置づけ
質問票は道路交通法89条2項が根拠の手続きです。記事末尾に挙げた合宿免許受付センターのような窓口や、どの教習所から申し込んでも、免許申請の段階では同じ制度の中を通ります。窓口や教習所が独自の基準で追加の審査をしているわけではありません。
申込前に確認しておくとよい項目は合宿免許の申し込み前に確かめることにまとめています。
この記事で確かめたこと
- 原文から引用した文
- 8件
- 出典
- 2件(法令 2)
- 公開
引用が出典の原文と一致するかを、公開後も機械で照合しています。確かめ方は運営者情報にあります。